初恋

宇多田ヒカルの「初恋」を初めてじっくりと聴いた。

彼女の曲は、聴いていて時々生死を連想する。

うまく説明できない。

悲劇的な何かを歌っているような気がする。

この曲は恋愛について歌っているはずなのだけど。

もっともっと深く、生まれてきた意味とか。

生まれて死ぬまでの目的とか。

流れて朽ちていく人生についてとか。

そんなものを感じる。

 

自分にとって恋愛がとても大切だった時期を、

俯瞰して思い返すことも少なくなった。

初めて会った店はもうとっくに潰れて、

今はビルさえも建て直された。

何も残っていない。

あの場所へ行けば、幽霊のように残像が蘇るだろうか。

人は面白いように移り変わって。

あの時確かに通じ合っていたはずのものは、

まるで二度と見ることのできない夢みたいだ。

 

何もかも忘れてしまった。

ただあの色のある世界に、

もう手が届かないのかと無性に悔しくて。

何も手に入れられなかった自分に絶望する。